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2026.01.26

「自分が住む町を、次の世代に価値ある形で残したい」
白浜町が描く、観光と共生のDX

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「自分が住む町を、次の世代に価値ある形で残したい」
――白浜町が描く、観光と共生のDX

和歌山県白浜町は、国のDX推進の流れを受け、早くから業務効率化と地域への付加価値向上を目指し、DXを推進してきました。しかし、人口減少が続く中で、現場の業務負荷軽減と、観光客への新たな価値提供という二つの大きな課題に直面しています。現在、白浜町東京事務所で所長を務める、鎌谷隆志さんは、自治体間の垣根を超えた学びの場である「まるごとデジタル」への参加を通じて、「外部とのフランクな意見交換」や「観光施策へのデータ活用」という、白浜町独自の解決策を見出しました。数々の部署を経験してきた鎌谷さんに、“自分の町の未来を育てるDX”の軌跡と展望を伺いました。

和歌山県白浜町東京事務所 鎌谷さん

和歌山県白浜町 東京事務所(所長)
鎌谷 隆志(かまたに たかし)さん

総務課、観光課、建設課、税務課、東京事務所への出向など、多岐にわたる部署を経験。その幅広い経験の中で、特に外部への出向がターニングポイントとなり、「自分が住む町を、次の世代に価値のある形で残したい」という想いを持つようになる。DX担当業務を所管していたタイミングで「まるごとデジタル」へ立ち上げ時から参加し、自身の学びの場として活用。現在は、観光誘致や企業誘致、そして関係人口を増やすことを次の課題と捉え、精力的に活動している。


Q1. まず、白浜町がDXに本格的に取り組んだ背景と、特に意識された課題について教えてください。

はい。まず国全体のDX推進の流れを受けたことが大きなきっかけです。個人的には、将来的に人口が減ってくることへの危機感が原動力でした。人が減れば、業務を担う職員も減ります。このままでは現場が耐えられなくなる、という切実な課題感から、RPAや窓口業務のデジタル化などによる業務効率化が必要だと考えました。

白浜町は約2万人の自治体ですが、住民サービスを維持しつつ、職員が抱える現場の負荷をどう軽減していくかは、常に大きなテーマでした。しかし、部分的な成果は出せても、新しいシステムの導入など、全体として大きな障壁を超えるところまではなかなか至らないというのが正直な取り組み当初の状況でした。


Q2. 外部との連携や「まるごとデジタル(まるデジ)」への参加は、どのような経緯で、どのような発見があったのでしょうか?

まるデジには、立ち上げの際、KDDI社からお声がけをいただき、参加させていただきました。まるデジの考え方がシンプルに面白かったこと、そして他の自治体さんの生の声を聴きたいという思いが強かったからです。

参加してよかったのは、自分の勉強になったのはもちろんですが、「全国のDX」についての理解が深まったことです。特に、他の自治体がどのような行政プロセスで、どのような課題を乗り越えているのかを知ることが、自分の町の施策を考える上で非常に役立ちました。

自治体は縦割りになりがちですが、まるデジという場でフランクに意見交換できることで、「自分たちだけではない」という共通認識と、具体的な解決策のヒントを得られることが、大きな発見でした。


Q3. これまで、具体的にどのような技術や施策を導入し、どのような運用上の課題に直面しましたか?

業務効率化の面では、RPAなどを活用した窓口業務のデジタル化を推進してきました。これは現場の負荷軽減を目指すものです。しかし、前述の通り、大きな成果を上げるには至っておらず、特に住民サービスの根幹に関わる部分での新しいシステム導入の障壁は根強いと感じています。

また、現在の課題として顕在化してきたのが、「DXによって観光客にどのような付加価値を提供していくか」という点です。白浜町は観光地ですから、周遊箇所を増やすなど、他の自治体が既に進めているような観光客向けのDXへの取り組みを強化する必要があると考えています。技術導入をゴールにするのではなく、観光客の利便性向上こそが、町の付加価値を上げるDXだと考えています。


Q4. 「観光DX」という新たな課題に対し、どのような改善策を検討されていますか?

現在、観光施策に人流データを積極的に活用できないかと考えています。データに基づき、観光客の動きを可視化することで、より効果的な周遊ルートの提案や施策を打ち出せます。

また、AIを活用した意見集約も検討しています。具体的には、各観光施設の口コミなどをAIで分析し、ポジティブな意見、ネガティブな意見を素早く集約することで、サービスの質の改善に直結させたいと考えています。これらは全て、職員の感覚や手作業ではなく、デジタルで効率よく、かつ深い知見を得るための取り組みです。


Q5. 職員の意識改革や、外部連携を深めていく上での今後の展望を教えてください。

今後もまるデジのような外部の場には積極的に参加し、特に同じ人口規模の自治体が成功している事例があれば、それを参考にしたいです。まるデジには、民間事業者との協業を通じて新しい取り組みを成功させてほしいと期待していますし、白浜町としても引き続きそうした取り組みに参加していきたいです。

私のメインミッションとしては、観光誘客や企業誘致、そして関係人口を増やすことを掲げています。DXは、これらのミッションを達成するための強力なツールであり、自分の次の世代に価値のあるものを残し、自分が住んでいる町を育てるための手段です。


Q6. 最後に、DX推進に悩む全国の自治体職員へ向けて、メッセージをお願いします。

私もかつてはDXについて手探りで勉強していました。しかし、まるデジに参加したことで、他の自治体の担当者とフランクに交流し、個別の課題解決の知見を得られることが、何よりも自分の勉強になっています。

私たち自治体職員は、自分の町の課題を解決することが使命ですが、それを一から全て自分たちでやる必要はありません。他の自治体や民間事業者の知恵を借りることで、取り組みのスピードは格段に上がります。

今後は、ここで学んだことをまるデジの事務局や参加自治体に還元したいという思いでいっぱいです。ぜひ、他の自治体の成功も失敗も共有しながら、一緒に自分の町の未来を育てていきましょう。


「自分が住む町を、次の世代に価値ある形で残したい」という言葉に、鎌谷さんの行政職員としての深い愛と野望を感じました。観光地特有の課題をデジタルで解決しようとする、その一歩ずつの取り組みが、町の未来を豊かにするのだと確信しています。鎌谷さん、お話ありがとうございました!



一般社団法人まるごとデジタルについて

「一般社団法人まるごとデジタル」では、「人が主体の豊かなデジタル社会の実現」を目指して、全国の自治体とともにデジタルデバイドの解消・DX推進に取り組んでいます。2023年8月に高知県日高村、KDDI株式会社、株式会社チェンジの三者で設立し、今年で活動がまる二年経ちます。今後引き続き、取り組みにご賛同いただける自治体や企業を広く募集し、様々な地域に仲間を増やしていくことで、デジタルインクルージョンの推進と住民のエンパワーメントの促進に取り組んでいきます。



◆連絡先

一般社団法人まるごとデジタル

まるごとデジタル事務局 担当:趙、福本

メール:info@maru-digi.org

※ お問合せは一般社団法人まるごとデジタルのホームページ(https://maru-digi.org/)よりお気軽にお問い合わせください。